同じ障害者の目線から見て、この作品に感情移入することが多々あります。私は身体ではないので車椅子の方の苦しみは分かりかねますが、障害を負っているが故に限られること、それを自分以外の人間に背負わせたくないという鮎川の心情はよく理解できます。そし
て、彼が他者を拒絶する事で相手を守ろうとしていた状態から、他者と共生することで共に成長していこうと気持ちを切り替えられた部分については、とてつもなく大きな山を乗り越えられたなという勇気をもらいました。川奈についても、鮎川が抱えている困難やその気持ちを理解しようとする積極的な姿勢を見せられるだけで、「世の中には理解者だっているんだよ」という前向きなメッセージを貰えているようで心温かくなります。この作品のタイトルである「パーフェクトワールド」は、一見すると正反対の意味に捉えられるでしょうが、あらゆる困難や弊害をも乗り越えていく柔軟性のある強さを表しているように私には思えてなりません。有名な相田みつをの詩「みんなちがって みんないい」、正にそんな世界をさしているのではないでしょうか。この物語はフィクションですが、背中の肉を抉られていたり、排泄が自分ではままならないというシビアな実情を描きつつ、それを目の当たりにしてなお障害と向き合う川奈と、自分の障害と向き合ってくれる相手との関係を大事に育んでいこうとする鮎川の心が寄り添う優しい物語です。ハートフルな場面だけではありませんが、綺麗事だけじゃない状況を乗り越えようとするふたりに今後も注目したいと思います。
追記:文中の詩の作者は相田みつを氏ではなく金子みすゞ氏でした。お詫びして訂正いたします。
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