「99はドロまみれだものな」、好きな人、伊勢雅美の言葉の意味するところを、主人公の水野ひかりが噛み締めるように理解する場面で、この話はくらもち先生流のスポ根ドラマなのだなとわかる。
グレていた不良少年とはどんなものだったか、の表され方に時
代がたっぷりと出ているが、超越している大人っぽさで彼ら彼女らの世界の空間感に取り囲まれて気にならなくなる。
こういうコマ表現がすごいなぁ、というところが沢山あって、くらもち先生特有の男子の主人公との関わり方に感動がある。自分の頑張りと彼の驚くほどの協力で結果を出すことと、出逢いの妙を彼の行動力やひかりのこぼれ出る気持ちとで結実すること、余暇の漫画読書にいい時間を楽しんだ。
2作目「転校120日目」は、いつもポケットにショパンの松苗先生と生徒達の関係を連想させられる。自分中心の視点でどちらかといえば被害妄想の気も入ってくるような主人公の菜摘が、結局は、転校は吉、に変わる話。新しい仲間の、菜摘との、最初は見えてこなかった、分かりにくいクラスメート達の決して悪気の無い言動が、解ってくるようになる晴れ晴れ感がある。
それは、武田くんとの穏やかなエンディングに通じ、転校によって得られたものの最大の成果のようでもある。転校前に遜色の無い新生活、図らずも前の学校の仲良しの言った通り。
転校、という大きなイベントについて、恐らく読者は相当前向きにさせてもらえる感じの作品。私服の学校の雰囲気が出ていて、くらもち先生の漫画は、服装も大きな楽しみであったことを思い起こさせられる。
いずれも1979年発表。
追記:浴衣と下駄や草履の和装では走れない。。。
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