実に9作品も入っているので、たっぷりひかわ先生の作品を堪能できる。予想のつかない方向に入りながら、主人公の性格を工夫した(読み手によっては歯がゆさもどかしさも呼び起こされるかも。特に冒頭のゆきこサン)キャラが、彼氏彼女の関係としてはまとまり
をつけてる2カップルのシリーズ物二種。2作品と4作品。手堅いドラマ作りやどうカットした絵を見せるか、の手腕はもうこの時点から冴えている。昭和54年〜55年ララ誌掲載。
私はこの後半戦に入っている「魔法にかかった夏休み」(昭和56年)(元の単行本収録先は「白い窓の向こう側」 wiki情報。以下同様。)が、後の「彼方から」に代表される作者の作品の随所にあるきらめきの源流を見つけた思い。意外なSF展開がスリリングで、スピード溢れる。描こうとした主人公達を取り巻く特殊な環境、その中に新しいものの出現の数々の唐突ぶりは、制約のあるページ数ということにも起因するのだとは思っている。あのなかにギュッと詰めるには、相当描きたいことを割愛したのだろう。
直後収録の「P・M-ドリーム」(単行本では、「ちょっとフライデイ」に収録)は一転、恐らく安全路線の題材に回帰。しかし昭和57年に入っての掲載な為既に絵の固さが取れて、前半戦のカップルシリーズの時の、偶然の多用もやや極端設定も無く、進行の滑らかさが増している。特に、主人公の落涙シーンは先生のお力を感じる。
最後の「羊たちのマーチ」は、まるでアマゾネス同居人達にいたぶられ状態の男の子の日常の悲哀と恋。昭和60年8月号掲載。検索エンジンから、本作品元の収録先の単行本は「女の子は余裕!」。
以上全て掲載はララ。単行本段階では、和田君とゆきこ、杉田君とまゆ子のカップル編の計6作品のみだったようだ。和田君とゆきこのカップル3作目「私の銀河鉄道」は収録されていない。後半戦の3作品はそれぞれ別々の単行本に入っていたものを持ってきたようだ。
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