視覚情報から人は相手を判断し勝ち。クリストファー家の設定が話の構造に大きく依存、美形一家の中の容姿コンプレックスは新鮮さは少し無く、HQはとびきりの美女だけれど心が美しいといえない女に主人公が勝つ設定も少なくなく(且つハンサムが自分を選んだ
シチュエーション)、一旦どれだけ大切かを思い知ってしまう場面が別離か事故。よほど技術力が無いと、このタイプのハーレクインロマンスには最早私がウットリ出来なくなっている。論点が手垢まみれなのだ。しかしハンサムぶりを表すのに、ファッション誌を使ったり、実在の球団と監督が登場、ホテルも架空名ではないと来てる。ちょっと小道具的な使い方でそこにホントに居るかもしれない感じが出ている。それなのに仕事場面はなんだか弱い。敢えて触れてない可能性も考えてはいるが、それでも、私は、お飾り的な二人の仕事描写にはリアルな二人の生活が見えにくいところもあった。彼ポールが忙しいというところにおいてさえ。
「謎めいた相続人」(長崎さゆり/ジュリー・コーエン)を思い起こした。美醜こだわりのリベンジ物のあちらとは趣向は違うが。
あからさまで大胆で、数年前に私がハーレクインノベルを読み出す前にこの領域に抱いていたイメージのままの性的表現がここにある。バラバラ小出しにせず、まとめて2回、たっぷり書かれていて、本書をそっちで期待する場合は当然か知らないが、私には、冷却期間後のプロセスが納得的とは少しも言いづらい。特に、読み手を裏切ろうとする終盤の小細工が、少々不発で終わったように感じる。家族関係は努力続行でかわされた感じ。
誰もルックス良し悪しからは逃れられない。無関係に生きようとしている主人公さえも。「嫌悪」が「卑屈」と同じに見える。それでも、知り合って、中を知って良さが見えて居心地を感じて、そうして、外見という入り口からだけではない、相手の立体的な実像をつかみ、価値観を拡げるストーリー。
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