先生の大ファンではあるけれど、昔風な絵とちょっぴり野暮ったさのあるタイトルから、長らく積んでいました。昔っぽいのは、実際15年も前の出版ですから当然です。それでも尚、この高評価の理由は…と気になって読んでみました。
読み終わった直後は、た
った一冊読んだだけとは思えない満足感や幸福感でいっぱいになり、素晴らしい作品で高評価も頷けると思いました。何と言うか、良い意味で昔風なんですよね。今みたいに完全なBLでもないし、社会的風潮がどうのこうのでもなく、ヒューマンドラマ寄りのBLで同性・異性とか括らない、もっと大きな愛の話でした。
夫婦・親子・恋人など繋がりの濃く深いものから、主従・近隣・友人・福祉まで、とにかく多種多様な愛の形が見られて感慨深かったです。そこへ絵画や買収、「愛は金で買えるか」という哲学めいた難問などの伏線が複雑に絡まり合って進むストーリーは深みがありました。
お伽話のような所謂シンデレラストーリーかと思いきや、しっかりお金について考えさせられる、困窮する名門貴族と成り上がりの一般人という組み合わせも良かったです。何度も直面する金銭感覚の違いからくる礼一郎のボヤキのような脳内発言は、毎回笑ってしまうくらい面白かったです。
私は単なるきっかけとしか思っていなかった、そもそもの発端である「ガブリエル」…これがまた最後の最後で見事な回収劇を見せてくれて、さすが先生と唸りました。
とっても良い作品なので、先生のファンの方はもちろん、そうでない方にもぜひ読んでもらいたいです。
もっとみる▼