某サイトで評価が高かったので、購入しました。『博士の愛した数式』の優しくて温かな世界観を求めて読むと、そのギャップに衝撃を受けると思います。4編の短編が収録されていますが、どれもほの昏く、儚く、そしてひたひたと冷たい足音が聞こえてくるような
お話ばかりでした。生と死、清潔と不浄、愛情と憎しみ、正常と異常、その狭間で揺れ動く主人公の心情を非常に丁寧に繊細に描いています。食べ物がとてもグロテスクに描かれているのに、圧倒的な透明感を感じるのは、小川さんの筆力のなせる技ですね。救いのあるお話ではないので好き嫌いはハッキリ分かれるとは思いますが、小川さんの瑞々しい文章力と表現力を存分に味わうには最高の作品だと思います。特に『ダイヴィング・プール』の主人公の恋心の描き方は素晴らしかったです。
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