ハーレクイン文庫版で読んだ。
結果的に、醜聞にならないとも限らない、とは、思う。しかし、内容を思い起こすに、このタイトルはストーリーの裏側の方を支える終盤から逆算するもの。原題はより不可解(ギリシャ物であることを書名から判らせたいからなの
だろうが)であるが、一応はギリシャへ二人が向かう物語の、メイン部分であるのに。
ヒロインのことを誤解して彼がひどい言葉をいろいろ投げつけるHQ定番展開があるが、ストーリーの新しさは、頑なな自立志向をもつ彼女のキャラ。根拠となった事情そのものはHQコミックで他にも見たことがあるけれど、彼女の潔癖な位の、人の施しで生きたくないその強い意地が、ストーリー全体に背骨となって貫くのだ。ここまで来ると、性格設定で俺様なアンゲロスをムキにさせながら、調子を狂わせながら、遂にはヒロインのポリシーに沿った提案をさせる、そのある意味彼の真の陥落が、シャンタルお見事、と。それがこの話の私の評価どころ。作者の意向なるほど、と思った。
終わり方が良い。
ギリシャの風景が旅情を誘うように綴られた。花など植物の自然な生い茂り、海原を見下ろすアングルの簡単な説明が島に来たトリップ感、ギリシャと来ると誰もが連想する青や白、植物の色が感じ取れた。
私は舞踏会の、二人が踊る直前から踊り終えるまでの場面も味わった。
文庫版では表紙(直前に読んだ「スペインの愛人」と雰囲気被りしすぎてる。中身まるで違うのに。)が柔らかい女の子路線、けれど、こっちはもう恋愛中の大人モードで、全く異なる。
原題なら文庫版が、合っていたと思う。一方、邦題は、こちらの表紙が未読読者のタイトルイメージにはより合うだろうと思う。
もっとみる▼