愛が深まるほど、言えなくなる――
本当の私は、貧しい孤児だということを。
ロージーは早くに両親を亡くして貧するしかない身だったところを、
資産家の娘で親友のアラベラに救われ、居候させてもらっていた。
今、アラベラが意に反して結婚させられそうになっていると知り、
恩返しをしようと、ロージーは身代わりになることを決意する。
“アラベラ”に扮した彼女が花婿候補の公爵アレグザンダーに会い、
奇行を演じて嫌われることで、縁談を台なしにする計画だ。
だが、強欲で鼻持ちならないはずの公爵は実際、ハンサムで高潔だった。
心ならずも惹かれ、彼につい唇を許してしまったロージーはしかし、
自分が本当はアラベラではないことを言い出せなかった。
しかも、元婚約者に騙された経験のある公爵は、嘘が何より嫌いで……。