おとなしくしていたのに、きみが焚きつけるからだ
人魚姫みたいに泡にならない──報われない恋だとわかっていても。
事故で母を失い、自らも重症を追った中学生の温を引き取ったのは、亡き母の勤務先の社長・寒河江倭だった。車椅子生活となった温のため屋敷をリフォームし、専任の理学療法士まで手配してくれるという厚遇ぶりだったが、倭はぶっきらぼうで表情が読めない。けれど入院中、話せない温とまばたきで会話してくれた優しさを知る温は、倭への思慕をつのらせていく。そんな二人の間には一回り以上ある年の差と倭の大人の分別がそびえ立っていて……。