六年値を答えられない薬種屋の娘ですが、素値でいくらと訊きつづけたら、入婿の主が私の手の甲を二度ずつ押し返してくださいます(沖永りく )の注意事項

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漫画(まんが)・電子書籍のコミックシーモアTOPTL(ティーンズラブ)TL小説Realize出版C-Trap ROMANCE六年値を答えられない薬種屋の娘ですが、素値でいくらと訊きつづけたら、入婿の主が私の手の甲を二度ずつ押し返してくださいます六年値を答えられない薬種屋の娘ですが、素値でいくらと訊きつづけたら、入婿の主が私の手の甲を二度ずつ押し返してくださいます
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六年値を答えられない薬種屋の娘ですが、素値でいくらと訊きつづけたら、入婿の主が私の手の甲を二度ずつ押し返してくださいます 発売予定

830pt/913円(税込)

8/18(火)発売予定

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作品内容

【この作品は生成AIを使用しています】

これはいくらだね。中沢の隠居がそう言ったとき、早瀬鈴は当帰の根を紙の上へ並べ直している途中だった。六年のあいだ、この人は同じことを訊きつづけて、一度も返事をもらっていない。
早瀬屋は槙野の本町のまん中にある薬種屋で、鈴は二十四。十八で店に出て六年になる。この店で秤の竿を握るのは母だけだった。鈴は一度も触れていない。値を言えないというのは、この商いでは何も言えないのと同じことだ。
晩秋、早瀬屋が四百二十円で泉澤屋の証文を落とし、その家の主が婿に入ってくる。泉澤要、二十七。十六から店にいて十一年。町では、早瀬屋が四百二十で婿を買った、と言われている。母は三代目多兵衛の襲名を言い渡し、人も同じ秤を通ると言う。
人も同じ秤を通る、と母は言う。四十五年で百九枚の免状を出した家ではないが、この家にも数え方がある。鈴は六年、その数え方の外に置かれてきた。
要は数を訊かれると必ず答えた。桂皮は素で四銭です。掛け値も、負けもしていない値。鈴はその言い方に名前をつける。素値でいくら。表の値は帳に残るが、素値は残らない。嘘をつくくらいなら答えません、と要は言った。
泉澤屋の棚には引き出しが百二十八あって、そのうち十九が空いている。要はそれを毎朝数える。減った日はありません。人の手しか見ておりませんので、と言う男の目は、鈴が包みを結ぶ指のところで必ず止まる。
泉澤屋の棚の引き出しを、要は毎朝数える。減った日はありません、と言う。空のままの引き出しが十九から四十一に増えていくのを、この男は一日も欠かさず見ていた。
母の留守に山の男が当帰を持ち込んだ日、鈴は生まれて初めて秤に触れた。一匁二銭。三百二十匁で六円四十銭。自分の口で言った値だった。
泉澤屋の看板が下りる。弟が松本へ発つ。要は看板の下で、声も出さずに泣いた。帰り道、鈴は決める。私がつける。
結納の支度金を母が六十円と決める。低すぎます、と鈴は言う。要は理由を言わないまま百五十円を求めて断られる。弟が二年いて秤を持たされていないと聞いたとき、鈴はその理由をまだ知らない。
祝言の夜、鈴は襲名を止めさせて、額を書いた紙と同じ紙に、値のつかない二文字を書きます。TL長編小説・全10章完結。
両家の前で、鈴は支度金を三百九十六円と付け直した。十一年ぶんの、誰も口にしなかった数字だった。母はその場でそれを認めた。

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  • 六年値を答えられない薬種屋の娘ですが、素値でいくらと訊きつづけたら、入婿の主が私の手の甲を二度ずつ押し返してくださいます
    8/18(火)発売予定

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    830pt/913円(税込)

    これはいくらだね。中沢の隠居がそう言ったとき、早瀬鈴は当帰の根を紙の上へ並べ直している途中だった。六年のあいだ、この人は同じことを訊きつづけて、一度も返事をもらっていない。
    早瀬屋は槙野の本町のまん中にある薬種屋で、鈴は二十四。十八で店に出て六年になる。この店で秤の竿を握るのは母だけだった。鈴は一度も触れていない。値を言えないというのは、この商いでは何も言えないのと同じことだ。
    晩秋、早瀬屋が四百二十円で泉澤屋の証文を落とし、その家の主が婿に入ってくる。泉澤要、二十七。十六から店にいて十一年。町では、早瀬屋が四百二十で婿を買った、と言われている。母は三代目多兵衛の襲名を言い渡し、人も同じ秤を通ると言う。
    人も同じ秤を通る、と母は言う。四十五年で百九枚の免状を出した家ではないが、この家にも数え方がある。鈴は六年、その数え方の外に置かれてきた。
    要は数を訊かれると必ず答えた。桂皮は素で四銭です。掛け値も、負けもしていない値。鈴はその言い方に名前をつける。素値でいくら。表の値は帳に残るが、素値は残らない。嘘をつくくらいなら答えません、と要は言った。
    泉澤屋の棚には引き出しが百二十八あって、そのうち十九が空いている。要はそれを毎朝数える。減った日はありません。人の手しか見ておりませんので、と言う男の目は、鈴が包みを結ぶ指のところで必ず止まる。
    泉澤屋の棚の引き出しを、要は毎朝数える。減った日はありません、と言う。空のままの引き出しが十九から四十一に増えていくのを、この男は一日も欠かさず見ていた。
    母の留守に山の男が当帰を持ち込んだ日、鈴は生まれて初めて秤に触れた。一匁二銭。三百二十匁で六円四十銭。自分の口で言った値だった。
    泉澤屋の看板が下りる。弟が松本へ発つ。要は看板の下で、声も出さずに泣いた。帰り道、鈴は決める。私がつける。
    結納の支度金を母が六十円と決める。低すぎます、と鈴は言う。要は理由を言わないまま百五十円を求めて断られる。弟が二年いて秤を持たされていないと聞いたとき、鈴はその理由をまだ知らない。
    祝言の夜、鈴は襲名を止めさせて、額を書いた紙と同じ紙に、値のつかない二文字を書きます。TL長編小説・全10章完結。
    両家の前で、鈴は支度金を三百九十六円と付け直した。十一年ぶんの、誰も口にしなかった数字だった。母はその場でそれを認めた。

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