ハーレクインから本書を出していても、ハーレクインの強い縛りのないオリジナル作品となると、こんなに自由にやっちゃうのね、という破天荒シーク物。
日頃なんちゃってシーク物の嘘臭さがどうも私はあまり寛容にはなりきれなかった。まるで、日本が舞
台のストーリーのものが中国とごっちゃになって西洋の物語で扱われたストーリーみたいに、アジア全体を皮相的オリエンタリズムで眺められてるのと同じなんじゃないのか、と、居心地悪くさえ感じることがあった。
本作は、そのエセ中東度合いが思い切り突き抜けて、却って開き直って中途半端に戸惑わなくて済む。本国を離れ異国で楽しくのびのびしていたが、アラブ風に味付ける要素のため後半の舞台に活用した、という感じ。
中東の雰囲気へのシンボルのように、「憧れ」(?)のようにイメージだけ取って砂漠は出てくる。欧米が太陽メイン、イスラム圏では月がメイン、そこを物語前半で伏線に敷いて使うのは、作り物のイスラムイメージを唯一ホントっぽく味付けすることになり、またロマンチックさも増した。他のシーク物HQに珍しい月(あるにはあるが)という材料が、俄然根無し中東風をリカバーする。
HQにあって。HQお得意要素逸脱して大胆で、楽しませてくれた。
途中までマイフェアレディやスタア誕生型を取るも、奔放に作ってあるので、おかしく少し乱暴に変わっている。言葉づかいが、翻訳から来てない分全くストレートなお行儀の悪さまで生き生きしている。そこも余計に、ハーモニイbyハーレクインのほうはハーレクインブランドとは異なる味付けですと言わんばかりの。
大体、当たり屋ヒロインなんて初めて見た。
明け透けで言葉遣いに気取りが無さすぎて格調皆無。ベッドシーンが夢のように美化して描かれず少々生々しい。そういう線を狙ったとは思うが、庶民ではないのだ、という上流社会の矜持何処行った、という感じ。
男性の絵に見とれないのが残念。もっとフォトジェニックなら、眼で楽しめるのに。ロマンスが売り物なのだから。しかも本作は男性視点展開箇所が複数ある。メインキャラはもう少し魅力的に造形されればいいと思う、本当に。
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