なし崩しに愛されるため、途中で二人の関係を揺るがす出来事はない(彼らにとっては 「大」事件はあるかな)。嫉妬もご愛嬌みたいな感じ。
麻生先生は上流階級の邸宅や生活感を出すのが巧みで、ハーレクイン世界に浸れる。そこが描けない漫画家には、コミ
カライズ担当させないで欲しいと、力のある先生のを読むたび、沢山のハズレ作品の存在がハーレクインコミックの全体のクオリティを貶めている事を憂えてしまう。
理想の男性の具現化を強く求めている読者が多いようなので、一方、私は性格のいい男性も、早とちりしたり思い込みで人を傷つけたりの男性も、いろいろいることでこの分野にある程度の広がりを感じている点、HQに対する私の希望は一般的ではないかもしれない。ヒロインの相手となる男性全員がそこまで聖人君子ばかりでは金太郎飴で詰まらなくなると思う私なので、ストーリーは本当は多様性重視。その意味では、この作品は変わっているのは女王、王子の父、義兄の立ち位置、庶民ヒロインと彼との間のこと。そこはしかしあくまでHQ内の変化球。お約束のシンデレラストーリー。ちょっと刺激が欲しいときは物足りないだろう。
HQの定食を味わいたいときはいいと思う。
王子様、借金、恋人のフリ、ドレスアップの変身、妊娠など、あるあるの要素でストーリーが回っている。その意味では、「平凡な」HQではある。「庶民」が体験出来ない世界を垣間見せてくれているような麻生先生だから、この水準を果たせているのだと思える。
唯一悪役を引き受けている人物は、彼の愛のバリアーのおかげでそこまで暴れ回らない(原作では凄まじいようだが。あとがきによれば。)。
部分的に平凡を避けた、平凡な骨格のザ・ハーレクインの一作品。
女王の愛人もだが、ヴィターレには異母兄も異母弟もいるということは、一体王子様ヴィターレはいつ誕生? お父上の婚姻期間はどうなっているのだ?
表紙のヒロインの瞳の色は翡翠色していないーーー
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