紗栄子、32歳。人の顔を認識することができない彼女は、過去のトラウマから家に閉じこもり、孤独な日々を送る。外界との唯一の接点は、宅配便の配達員の優しい声。
かつて初恋を抱いていた人にどこか似た声だった。
どしゃ降りの雨の日に始まった彼とのささやかな会話は、紗栄子の心を揺さぶり、いつしか禁断の親密な関係へと発展する。
だが、彼女の障害を知った配達員の裏の顔が、静かな家に不穏な影を落とす。声だけが頼りの世界で、紗栄子は愛と裏切りの狭間で揺れる――。
切なくも刺激的なドラマが、閉ざされた家の中で繰り広げられる!
1話 相貌失認症