「俺はシークだ」という読み物とは一線を画しています。作者はトゥアレグを草食系と連呼していますが私にはそうは思いません。アラブにあっても彼は紳士。亡くなった妻ヌーラを忘れられないのは彼が賢いからなかなか恋におちないだけ。ただ美しいとか家柄が釣
り合うだけでは添い遂げられない、それだけではいけないという拘りもあるのだと読み取れます。生きていくために必要な水資源と、民族の歴史の重要性とを天秤にかけた内容も読み手を唸らせ只のロマンスでないことはズシンと響き、そのコントラストに引き込まれます。そしてリーザのカメラの意味するところが少し悲しい。レンズ越しでないと触れられない現実に気づいていない彼女の深層心理。それがトゥアレグによって解かれ、トゥアレグもまた彼女の懸命な生に心を打たれて結ばれるのは読んでいて心地よい物語でした。
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