ルーカンが、自らを兄殺人未遂犯と蔑んでカラに語ったのは、そんな男でも愛してくれるかい?というとてつもない遠回しな告白だったのですね。相手を怖がらせて受け入れてもらえるわけがないのに、甘えたのかしら。兄の挑発に乗って引き起こしてしまった事故の
悔恨に卑屈になっている彼に同情してしまいます。全ては兄の策略と知らないのだから。そして、兄ブライドの歪みっぷりにも恐ろしくて背筋が凍ります。しかし、兄弟をこんな状況にしたのは全て彼らの母親のせい。最も非情で歪んでいたのは母親で、その所業の全てが兄に移植されてしまっているかのようで、悲劇そのものです。そんな二人に出会ったカラ。おっとりとした箱入り娘そのものに描かれている彼女が、流されてルーカンについていくのも、陰口に反発しルーカンを擁護するのも世間知らずで裕福な育ちのそれを際立たせています。だから、真実を知る人がいないルーカンの孤独を彼女が理解できているのか違和感があります。「揺るぎない価値観を持つ」とルーカンは言っていますが、そんなもの測る基準はありませんから、惚れた欲目でしょう。それだからカーラは、自分を高く評価してくれることに喜び、強さを持つことに責任と使命を持っているルーカンに惹かれたのかもしれません。要するに、どっちも好都合な一目惚れだった。
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