容姿が素晴らしいと説明されても絵がそう見えないことが漫画にはある。
この作品は文字の描写を裏切らない。冷たい外見だけれど吸い込まれそうになってしまうヒロインを理解しやすい。
唇に付いた雪のシーンの雰囲気も良かった。ただし、普通すぐ溶ける
とは思うが。
二人がロマンチックに接近してしまう格好の空気感が、雪の小道具で引き立つ。よく使われる、ヒロインが躓きそうになる所を咄嗟に彼が手を差しのべるシーンも、雪が一連の行動の中で不自然さなく役を全うしてくれてる。取って付けたようなシーンが多いところなのに、巧みに引き出している。
HQは自分の子でなくても我が子の様に慈しむヒロインがよく出てきて、それだけでも既にヒロインへの好感度一杯にさせられてることがよくある。
この設定、出てくるとまたか、と思っているのに、この状況に、ヒロインのお相手がどう振る舞うか、私は毎度成り行きに興味を繋いでしまうのだ。しかも、彼がまた、これ以上の父親になれる男性はいないと思えるほど素晴らしい。
男性が恋人や夫になれても父親にはなれないケースがあるだけに、これは本当に絶賛出来る。こういう人が素敵な人で自分が好きで、相手も自分を好き、なんていう状況、羨ましすぎて、彼がルディにかかわるシーンの美しさが強いインパクト。
ヒロインが豊かな愛情の持ち主である故に、物語の柱になる恋愛感情の相手も、我が子でなくともどう愛を注げるかを見たい!という気持ちになってしまう。
また、なにしろルディの愛らしさが最強。
絵の上手い尾方先生がコミカライズ担当で大正解。
ストーリーは在る意味王道展開。ヒロインは彼から疑われるも、その潔白が明らかとなり、二人の発展を妨げるものの解消をみてのハピエン。
ルディの母親リゼットの母としての未熟さ、これは心配。まるで手を切った形で(ご都合主義だが)懸念を断った。折しもカルト教団事件報道の日本、考えさせられる。仮装舞踏会の夜の物語全体の中での強引な異質さ、転換点なだけに力業が気になる、弟の猛アタックの阻止の出来すぎタイミングなど?もあるが目くじらを立てなければ、充分楽しめる。
邦題に「仮装舞踏会」を持ってきたことが、構成上の仮装舞踏会の異物感を消すことになっている。はめをはずすイコール互いを隔てるものを飛び越える絶好の場として、海外ものはこの趣向が好きだなぁと、HQで見かける度に改めて思い知る。
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