シリーズと謳っていないが為に次があると認識されず損をしている。「女相続人に求婚を」、本作「レディの冒険」、「舞い戻りし花嫁」の三作品で完結。 かくいう私も今回三部作完読を狙う前は知らずに第一部と第三部を読んでいた一人だ。
この種の販促ミス
は読者にも失礼なことなのだと、出版側は思い至って欲しいものだ。
三部作にありがち、真ん中作品のレビューが相対的に低めという現象。ご多分に漏れずこの第二部もその憂き目に遭っていて、手が伸びずに過ごしてしまい、第一部と第三部もそれぞれ読んだ時期が離れてしまっていた。
此では余計第二部は分が悪い。
このストーリー、犯人探しという謎解きのようなスリルと、ばれるのではないかというドキドキもあり、そしてそんなさなかに出逢ってしまった二人、ラブはどう育つか、という娯楽作品としてキュッと身の詰まったもの。粒揃いの三部作中で他に決してひけをとらない出来なのだ。
見事に手抜きのない絵は、三作品共通。同一作者だと同一人物に繋がりを感じて、全部を読んで初めて見渡せるものがあり、作品の世界への没入もしやすい。それに、いずれの場面展開にも唐突感がなく、狭い舞台の中で微妙に人物達の居場所の異なるシーンが上手く繋がっている。これほど三作目への橋渡し的伏線を散りばめながら、あとがきに予告すら触れてない。
その時点で三作目の担当未決定だったかもしれないが、これは作者にとっても不幸だ。通して読むべき。
この作品のレビューに、「これで完結?」というのがあるのは残念でならない。
三作目にある言葉、「相手が心を移した瞬間に消滅するような愛は愛ではない」をいくらここでアピールしても、ここで先があることを知られなくては効果が発揮できない。
このストーリー、マーカスの人柄が酒場の一件に滲み出ているのに、ただのケンカ扱いから、事の発端についての真相が明るみになる場面が頁的に作れなかったのが、少々悔しい(マーカスの為に)。
ヒロイン弟も改心するシーンは無いしで、その消化不良は本当ならこの作品中に晴らしておきたかったところではある。
補足)シーモアさんが要望を受けて版元に掛け合ってくれたので、10/12にはタイトルに三作の繋がりを示すワード「十九世紀の恋人たち」と、1〜3が入った。これで纏まって読みたい人は洩れなく読めるようになった。良かった。
酷評する人、意味がわからない。
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