学生ん時ぁ楽しかった。
社会に出たら変わっちまった。
でも何かでっかい事したい。
酒の席でヘベレケになりながら、こんな事を同僚にこぼす。
文具売り込む仕事だってのに愛想笑いの一つも出来ない。
折角出来た美人な彼女も、昔の男がチラつくや否
やその手を離してサヨウナラ。
主人公・宮本浩は不器用が服着て歩いてる様な奴である。
それ故、初期は読んでいてどうにも歯痒さを感じる部分がある。
でも、こんな宮本だからこそ成長し甲斐があるってもんで、弾けてからの彼は痛快である。
目を背けたくなる程に人間臭い、ある青年の物語。
作者の新井英樹氏は、漫画の中で叫んでいる。
基、新井英樹氏の漫画が、このしみったれた世に向かって叫び声を張り上げる。
私は幼少時からこの作者のファンだ。この人の漫画の中では、ある一つの事柄が『正解』として扱われる事が無い。キャラ一人一人が己の信じる『正解』を他人のそれとぶつけ合う。
現実ではこれが当然の営みだが、漫画の中でそれをここ迄描き切れる人を私は他に知らない。
人間や世間の汚ねぇ部分を抉る様に掻き集めて我々に見せ付ける。新井氏の漫画はそういう漫画。
それ故直視出来ない人もいるだろうが、汚物の中に希望とか救いとか、漫画が“創作物”である以上、新井氏は必ずそれらを入れてくれている。
それを頑張って見出だすのが、氏の漫画の醍醐味の一つ。
喝入れられたい人。
是非、御一読あれ。
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