シベリア抑留…教科書やテレビで聞いたことはあっても、その詳細は知りませんでした。
この作品は作者のお父様の体験が基になっています。実体験ならではのリアルな描写です。現代と同じ普通の若者が戦地に徴兵され、戦い、敗戦後、敵対国に捕らえられシ
ベリアに抑留される。
極寒の地で強制労働をさせられ、満足な食事もないなか、栄養失調と疲労で次々と病気になり亡くなっていく。終わりも救いも見えないなか、その絶望とはどれ程のものだったのか。
普通にご飯を食べて、勉強して、友達や恋人、家族と過ごす。起きて寝て笑ったり泣いたり、夢や希望や未来を信じて朝を迎える。
そういったものを、全て奪われて、なぜ彼らはそんな目に遭わなければならなかったのか?そして、多くの人間を不幸にした戦争をなぜ国は押し進めたのか?なぜ、狂気を止められなかったのか?
冒頭でお父様が「思い出せない」と呟くシーンがあります。あまりに辛いことは人は記憶から消そうとするそうです。
今、71年前の状況と似たような流れを感じさせる動きがあります。もう二度とあの悲劇をくりかえさないために、多くの人に読んでもらいたい作品です。
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