丁寧な心理描写に、物語に引き込まれます。私の大嫌いな虫が物語の全編を通して出てくるので、再読はできないと思われますが、本当に人物の造形が素晴らしい。特に文乃と石田の不倫の物語が秀逸で、「Release」の遼平とはるひの切ない恋を彷彿とさせる
ような、切々と胸に迫るストーリーでした。妻子のいる身で不倫しておいて、「幸せになれ」と別れを切り出す石田の狡さと誠実さに泣いちゃいました。この作家さんは、凪良さんや一穂さんのように一般誌でも十分やっていけるよなーと思うと、BLにとどまってくれていることが本当に嬉しいです。本編の歯科医と高校生のカプは、大人の落ち着きあふれる攻めと鬱々と悩むグルグルの受けで、「いつものやつ」と頼むお酒(やったことないけど)的な安心感と安定感に満ちたお話となっております。エチは一回もありませんが、「ある」という匂わしの描写があり、もうそれで十分な満足感です。でもそのシーンも欲しかった!大っ嫌いな虫が全編登場でも星5をつけるしかないおもしろさでした。
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