ヒロインであるジリーの出自は他の兄弟と違って最後まで判明する望みはない。ただ、胸のすくように感じ取れるときが多いくらい、ちょっとかっこよく育った。
本作の前に読んだ「路地裏の伯爵令嬢」より先行して世に産み出されたらしいが、筋立てはこちらの
方が何倍も面白く味わえた。対になるような作品で、しかも共に貴族と庶子の組み合わせであるため、貴族でない相手のほうはこれ1回きりと思って臨む、ハーレクインぽい舞踏会シーンがある。終始白昼堂々とは出来ない、周囲を憚る二人が、物語の変則点を迎えるのだ。
路地裏ーには3星と迷いつつ3.5のつもりで4星をつけることにしたが、こちらは4.0くらいの気持ち。
読んだ順序を間違ったとは思ってない。むしろ、あっち先、こっちあと、で良かったくらいの気持ち。あっちでは冷たかった男性がこっちでは熱くなって、こっちではひどい事しちゃって雲隠れの女性があっちでは不誠実とはいえなくて。
本作はハーレクイン小説が持つイメージ、性的描写ごろごろだろう、との予測のまま、その通りで展開。中盤以降はなんだそれを書きたかったのか、とも思える怒濤の連続的記述。さすがに濃さと露さに疲れたーー。
既にエティには複数の男の子が居るところに、生まれて数時間のジリーが戸口に置かれて、との冒頭。彼女は安易に手放したりはしないキャラ設定。その後、長男ミック、ヒロイン、そして下に弟たちに次女との構成がストーリー中に示される。冒頭はミックの他に男の子が居たとなるはずだが、そこの説明が見つからない。これ、ハリポタでは、同シリーズの翻訳者松岡佑子氏が述懐していた、長幼の区別が英語では明確ではないことのあらわれなのだろうか。もしそうなら、同一の書籍の中では戸惑わせないで統一を、と思う。
もうひとつ、13%の所で用いられた「代物」がよく用いられる使い方をしていないので、辞書も引いたが結局不明のままだ。
トゥルーラブの一家はエティさんの細腕(+預かったことによる当座の養育料?)で支えたという設定が、なんとも納得感足りない。ファンシーの父である地主のいきさつが一文で済まされたことによる、現況への説明が無いことも読み手置き去り感。
設定の際どさで人目を引く狙いかもしれないが、初めにその設定ありきで突き進んだ気がしてきて、ソーンの決断や、ソーンの母親の変化、ジリーの酒場の今後の位置付け等々は雑になっていると感じる。
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