三年前に夫を亡くした紙漉きですが、荷札に還すと書きつづけたら、片づけ屋が毎晩うちへ帰ってから私を思い出しています(沖永りく )の注意事項

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漫画(まんが)・電子書籍のコミックシーモアTOPTL(ティーンズラブ)TL小説Realize出版C-Trap ROMANCE三年前に夫を亡くした紙漉きですが、荷札に還すと書きつづけたら、片づけ屋が毎晩うちへ帰ってから私を思い出しています三年前に夫を亡くした紙漉きですが、荷札に還すと書きつづけたら、片づけ屋が毎晩うちへ帰ってから私を思い出しています
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三年前に夫を亡くした紙漉きですが、荷札に還すと書きつづけたら、片づけ屋が毎晩うちへ帰ってから私を思い出しています 発売予定

830pt/913円(税込)

8/19(水)発売予定

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作品内容

【この作品は生成AIを使用しています】

初冬の、霜の降りた朝だった。若槻千代は納屋の板戸を半分だけ開けて、そこから先へ一歩も入れずにいた。三年前の十一月三日、赤土坂で荷車が落ちて、夫の壮吾は三十六で死んだ。納屋にはその人の道具と紙が、そのまま置いてある。
千代は三十一。二十二でこの家へ来て、九年、坂の上で紙を漉いている。日に百五十枚だったものが、いまは七十枚になった。板塀の切れ目のところに男が立っている。甲斐野透、三十三。十八から十五年、人の家の遺品を片づけてきた男で、納屋の中へ一歩も入らないうちに、梱が四十一あると言い当てた。一日八十銭、二十日で片づく。そういう見積もりだった。
捨てる、ではなくて、還す、と言っていただきたいんです。千代がそう頼むと、透は条件を一つ出した。還したら、数えてください。それから毎日、荷札に太い字で還すと書いて、二人はその数を足していった。今日は七つ還した。
透は十一日来なくなり、千代は人手が要るという嘘をついて、橋を渡った裏長屋まで迎えに行く。井戸端に桶を三つ並べて竹皮の握り飯を分け、透は十八で母を亡くした日のことを話す。町に噂が立った日、千代は漉き場の戸を閉めずに、かえって開け放って仕事をした。
透は簀桁の減り方を見て、壮吾の最後の半年について何か言いかける。千代はその手首をつかんで止める。紙問屋は腕が上がらなかったと言い、佐野の婆は問屋へ出す日ではなかったと言い、車力は紙以外に何があると言う。三人が三人とも、違うことを言っている。
千代は透に簀桁を持たせてみる。一枚目は裂けた。二枚目が板に残った。反故を三百枚漉き返して作った一枚を、透は何も言わずに置いていく。晦日で終いにすると言った口で、その言葉を自分から取り消す。
奥さんが井戸の縁でしゃがんでいるところとか、木槌を持ち上げる前に一度肩を回すところとか、そういうものを、おれは家に帰ってから思い出しています。毎晩です。庭の土の匂いが立っていた。千代はその匂いを九年嗅いできて、その夜はじめて、それが自分の体を熱くするのに気づいた。
荷札が四百七十二枚になって納屋が空になるまでの、初冬から初秋まで。三年開かなかった板戸の話です。TL長編小説・全10章完結。

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作品ラインナップ 

  • 三年前に夫を亡くした紙漉きですが、荷札に還すと書きつづけたら、片づけ屋が毎晩うちへ帰ってから私を思い出しています
    8/19(水)発売予定

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    830pt/913円(税込)

    初冬の、霜の降りた朝だった。若槻千代は納屋の板戸を半分だけ開けて、そこから先へ一歩も入れずにいた。三年前の十一月三日、赤土坂で荷車が落ちて、夫の壮吾は三十六で死んだ。納屋にはその人の道具と紙が、そのまま置いてある。
    千代は三十一。二十二でこの家へ来て、九年、坂の上で紙を漉いている。日に百五十枚だったものが、いまは七十枚になった。板塀の切れ目のところに男が立っている。甲斐野透、三十三。十八から十五年、人の家の遺品を片づけてきた男で、納屋の中へ一歩も入らないうちに、梱が四十一あると言い当てた。一日八十銭、二十日で片づく。そういう見積もりだった。
    捨てる、ではなくて、還す、と言っていただきたいんです。千代がそう頼むと、透は条件を一つ出した。還したら、数えてください。それから毎日、荷札に太い字で還すと書いて、二人はその数を足していった。今日は七つ還した。
    透は十一日来なくなり、千代は人手が要るという嘘をついて、橋を渡った裏長屋まで迎えに行く。井戸端に桶を三つ並べて竹皮の握り飯を分け、透は十八で母を亡くした日のことを話す。町に噂が立った日、千代は漉き場の戸を閉めずに、かえって開け放って仕事をした。
    透は簀桁の減り方を見て、壮吾の最後の半年について何か言いかける。千代はその手首をつかんで止める。紙問屋は腕が上がらなかったと言い、佐野の婆は問屋へ出す日ではなかったと言い、車力は紙以外に何があると言う。三人が三人とも、違うことを言っている。
    千代は透に簀桁を持たせてみる。一枚目は裂けた。二枚目が板に残った。反故を三百枚漉き返して作った一枚を、透は何も言わずに置いていく。晦日で終いにすると言った口で、その言葉を自分から取り消す。
    奥さんが井戸の縁でしゃがんでいるところとか、木槌を持ち上げる前に一度肩を回すところとか、そういうものを、おれは家に帰ってから思い出しています。毎晩です。庭の土の匂いが立っていた。千代はその匂いを九年嗅いできて、その夜はじめて、それが自分の体を熱くするのに気づいた。
    荷札が四百七十二枚になって納屋が空になるまでの、初冬から初秋まで。三年開かなかった板戸の話です。TL長編小説・全10章完結。

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