事故の日の出来事はそれきり相手もわからずじまいのはずだった。でもそれだけで終わらなかった。
閉ざされた空間で、ましてや故障、いつ安心できるのか、いや、復旧するのか。その恐怖心を和らげる相手が居合わせた。密室で緊迫の二人きり状況下好まし
いとは、これは本能の問題。直感力勝負で二人は相手を無条件で欲した。このストーリー、究極の相性がテーマと私は捉えた。切羽詰まった時にとる行動で、男性は愛が無くてもできるか知れないが、ヒロインが感じ取った安心感は本物だと思う。神経が研ぎ澄まされている時に嗅ぎ取ったのである。
ある極限に置かれたとき相手に緊張しないのは、特殊な心理状態であったことを割り引いて考えたとしても、その男性の発する何かに、自分のアンテナが呼応したのだと思える。
無論、お話はその仮定を作り出してキャラを動かしている。パニック映画で、女性と縁の無かったキモ男軍団が、もうチャンスがないとばかりに襲う世紀末的フィクションがあった。このストーリーは、刹那的な慰めと心のいっときの平安の為だけに終わらずに、HQ様式で結末まで綺麗に気持ちよく読めて、しかもヒロインはその事故のトラウマも乗り越えることができて、楽しめた一冊となった。
しかし、アメリカ駐在経験者からアメリカでは立派なビルも新しいビルも実によくそれは止まるという話を聞いている。そのせいで、出勤や、取引先との面談に間に合わないことさえあると言っていた。
なので、この設定、そこまで暴走?、という戸惑いがなかったわけではない。
しかし、そこに缶詰状態となってしまうアクシデントは古今東西ドラマの舞台となる(映画もある)ものであり、非現実というつもりもない。
終わりよければ、ではないけれど、ヒロインが不幸な交通事故みたいのに遭ったことにならずにすんで、むしろ、素晴らしい出会いの場を提供した事故で良かったね、と感じた。
しかも、このストーリー、仕事とプライベートとの関係や上司のフェアな評価など、キャリアとかのラブ以外の要素でも、気持ちのよいところがたくさんあって、そんな脇の固い内容が余計に満足感を高めるのだ。
社長の狂言回しも、周囲の人間の描かれ方も、過不足無くて生きている。
事故時の顔をちゃんと見せない工夫が本人登場後とイメージにギャップが。
欲を言えばすぐパレるのだから、もう少し近づけてくれるとよかったと思う。
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