初読み作家様です。ずっと読みたかった作品です。『嫌いでいさせて』も気になる作品で、どちらも胸が痛くなりそうで、ゆっくり読める時まで大切にしておきたかった作品。
人魚の呪いを受けて生まれてしまった海。見た目だけで、実の両親から忌み嫌われた悲
しい生い立ち。どうして自分の子供を愛せないのだろう。どうして我が子を、バケモノのように蔑むのだろう。悲しくて胸が痛い。涙が止まらない。
彫師・直助に生きる希望をもらい、死んだ心が甦る。胸を張って生きていいんだよ。
見た目が美しくとも、心が薄汚れた人間なんて沢山いるのです。心が腐った人間こそバケモノなんです。蔑まされてきた海が、親を恨んだでしょうか?仲間外れにした子供たちを憎んだでしょうか?ただ、哀しみ自分の運命を受け入れただけ。海こそ、誰よりも美しい人間なんですよね。
海を美しいと惚れ込んだミカギは、詐欺めいたインチキ霊媒師。彼もまた、親に心を殺された悲しい生い立ち。生きるために入れ墨を入れられた海と、死を望まれたミカギの背中の傷。はぁ、涙が溢れて読む手が止まります。
二人で寄り添い、空虚な心を埋めつくし、愛を溢れさせた姿に涙。涙。誰よりも愛しい人。
タイトルは『かなしき』と読みますが、やっぱり『いとしき』人だと思いたい。いとおしいんです。
海を支えて守ってきた、クロと錦の存在が温かいし、助けてくれた東姉さんも心豊かな優しい人。
辛い事ばかりではなく、理解してくれる人もいるから、二人で胸を張って生きて欲しいですね。
幸せになって欲しいと願わずにはいられません。
読んで良かった!ホントに良かった。
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