時代は李氏朝鮮、暗殺された王の急逝により王位を継いだのは、冷酷な王女・楚姫(チョヒ)。彼女の暴政は国を混乱と恐怖に陥れていた。
そんな中、ひっそりと国に身を寄せていた錬金術師・オドの元を訪れたのは、楚姫の弟でありながらその毒見役として命をすり減らす王子・昇珉(スンミン)だった。昇珉もまた楚姫のことで頭を悩ませていたが、自分の低い身分に無力さを痛感していた。暴君の身代わりとなり、毒に当たるのは時間の問題…。
そんな毒見役としての希望は楚姫の食事に触れる一瞬の隙。
暴君の姉を殺すため、昇珉はオドに「王の使う銀食器に反応しない致死毒」を作ってほしいと言う―――
毒を盛るのは誰か。毒に倒れるのは誰か。
血を分けた王族の姉弟を引き裂く、宮廷に渦巻く謀略と身分の残酷。
これはオドがそこで見た一つの備忘録。
前作『オドのための備忘録』の続編です。
前作の過去にあたるお話です。
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