好きな人の妻になるというのは、その人の住む世界の住人にもなれなきゃいけない。
自分にはなれないと思ったら妻にはなれない。
好きなら、結婚には覚悟が要る。
生硬な線が、まだ描き慣れ不足を感じた。
狩野先生の他作品見てみると、こ
の作品の発表時点が、脂の乗る時期はこれから、ということなのだろうと感じた。
一つ一つのエピソードの切り替わりが唐突な印象。
読み返していて、この内容は、実はHQにしてはフォーカスしている要素が意外にありきたりなところでないのが、注目に値すると感じた。
結婚とは、という根源的な問いかけが、将来有望な政治家の妻になる(しかも出馬はまだしておらず)との一種覚悟の要る、しかも求められるものも高いある意味現代の社交界に足場を置く家の人間との結婚話を通して突きつけられている。
エスタブリッシュメント同士の冷静で実利的な組合せではなく、愛情一本での組合せで前に進めるか。ヒロインは、自分には無理と二度も降りてしまう。気持ち分かる。しかし、二度も求婚で拒絶された彼のほうの落胆を思うと、愛だけで全てを乗り越えられるのか、このテーマ性は、HQ的ジャンルなのになかなか扱われてこなかった要素だと改めて認識させられた。
一度目、彼が如何に苦しんだか、ここに、読者は女性であるがゆえ理解に限界があり、一方、ヒロインは、身を引いたためらしいと察知させる流れで3年間、双方とも苦しかったことを伝えている。
二度目、67頁、彼の胸中察するに余りあるものがある。しかし、ここ、読者は彼の心情より、普通の人生送ってくれるのじゃないのかという、ヒロインの期待の方に目が行くかもしれない。そんなの無理、と尻込みするヒロインに、108頁は、「僕は君のなんだったんだろう」という場面。
ここを、盛り上げる構成だとどうだっただろう?
彼の一人相撲と映るかどうかの境目かと感じる。
妻には妻の、夫には夫の、夢も希望もあり、人生は究極には別物。でも、愛し合い結婚するとき、相手にとっての、妻であり夫であることはどういうことなのか、そこを考えさせられてしまう。折しも、フランス国新大統領に選出されたばかりの政治家とその妻を思い起こさずにはいられない。
112頁「あなたが3年間苦しんでいたというなら/私も/身を引くのがどれだけ苦しかったかわかって」、ヒロインの台詞は、愛も別れも、一方だけのものでなく、二人のものと感じる。
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