何者?という登場人物夜(いつや)さん、この二人の関係は?という夜さんと昏(こん)さん。
感情のやり取りが琴線に触れて来るので、主人公晨(とき)の回りが抱えるものを、この三人の小さな存在が核として同心円状に外に少しずつ、広がりを見せ、スッと
終わる。
しかし夜さんの、魔法にも似た力は、彼女の存在への不思議を駆り立てられこそすれ、晨達を決定的に変えるのではなく、視点を僅かにそらし見守り導くスタンス。登場人物たちの日常はファンタジーとはいかずそこにあり、晨も昏睡も未来に向かって人生が続くのだ。
作風として定まった印象を受ける安定的な筆致に、くどくない骨太の力が籠っている気がした。絵に普遍的な懐かしさ、人を寄せ付ける郷愁もありつつ、描かれ方はど真ん中路線。作品全体、マンガというものをよく知っている人の手による、ファンタジーフレーバーの人間ドラマ。生きている、ということ、生きていく、というこ
そこを示してくれる。
ほんのりうっすら説教臭い箇所があるが、巧みに分散化して、複数箇所小出しに紛れ込ませて分からないようにできなかったものかと思った。気になりすぎはしないが、不思議な力を描写しているすっとぼけの効力は弱まった気がした。
青年誌掲載だったようだが、お色気無し健全路線。
ほっと落ち着いて読み終える。
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