音楽を扱っていて、主人公の不屈さが物凄い。
日輪(ひわ)のターンや、ビルのターンもなかなか分量を占め、主人公朱(あけみ)に襲いかかるこれでもかこれでもかの妨害工作の敵対の構図に、どこか敵対関係をストーリーで作り出すために、まず、構図ありき
でエピソードを用意したように感じる。
最後は一意氏にも試練を与えて、さすらう。かなり違うのに、それでも、山岸凉子先生「アラベスク」第一部をちょっと思い出してしまった。
音楽を扱っている漫画の傑作は数多くある。私がまだ読んでいないがいつか読みたいと思っている「ピアノの森」は少年誌発表なので多分一番手に取りにくいけれど、「のだめ」と「坂道のアポロン」とは特に好きで、何度も読んでいる。
音が目に見えるような気がする時があるのがいい。
この「ピアニシモでささやいて」は、音楽を扱っていながら、音楽そのものではなく、音楽の持っている性質を描いた。だから、音楽シーンは感覚的に、楽器を演奏しているのだな、歌を歌っているのだな、という印象で出来上がっている。詞は流れて行き、画面のなかで言葉に立ち止まることはなく、そこに深いテーマを感じるほどではなかった。
だが、プログラムに愛が仕組まれている、というくだりは、もっとも悲惨な生き方を強いられて来たビル氏のターンとして、強いメッセージ力があった。
顎が尖っているため、好まない画法と感じる人もいるかもしれない。私は個性と受け止めている。
朱をヒロインに置きながら、日輪なくしてはドラマが成り立たなかった。
最終の一意の不在、私にはその強い必要を感じず、このストーリーは、ヒロインに手放しの幸せを絵として見せつけず、二人をバラバラに過ごさせることが、(作者が)好きなの?と穿ってしまった。
もっとみる▼