やはり物凄い才能の持ち主なのだと驚嘆する1冊。70年代発表作品を主に収録。
上から横からとアングルも多様、コマの取り方が天才的で(218頁の曲線とか)、語り口の巧みさ。それでいて、強いアクがない丸みのあるライン。軽く行ったかと思えば未来社
会の持つ息苦しさが示されたり、人生の出来事の一片を切り取った中に見せる心情に共感できる部分があったり。いつの間にかそれぞれ描かれた萩尾望都先生ワールドに連れていかれてしまう。1冊読み終わるのが惜しい気持ちで少しずつ読み進めた(読了直後で冷静さ欠如かも)。私はするする読むよりも、ちょびちょび読み進めて楽しむほう。くだけた日常生活も見せる「赤ッ毛のいとこ」も、SF物で異端者の生き方にメッセージが籠る「あそび玉」も、理解を越えた者を受け入れない人間社会を横目に鮮やかに生き抜く精霊達を描いた「精霊狩り」とそのシリーズも、あまりにも広角領域の作品群で、使われた言葉の巧妙な説明力と、絵に表されたモノの、こちら読み手の想像力をかきたてるうるさすぎない少なすぎない説明力とがバランスとって引き付けられていってしまう。急いで一気に読むことはないな、と2作品目で思ったこと。実際最後まで隅々残らず読み通してみて、改めて、初期70年代作品の充実ぶりに目を見張り、やはり最初から輝いていたのだと認識させられた。原画展へ2022年7月に行ったときの緻密な一連のアートワークを思い出す「月蝕」も収録されていたのは望外の幸運さで、嬉しく思った。「デクノボウ」の中で海に入り込む絵(308頁)が、読み手の私が萩尾先生の深淵な創作力の一端を見せつけられた気がして、今後も気になる先生だと改めて思わされた箇所。尚、159頁まりの足の向きが?「花と光の中」は制作時間不足?。
外から捉えられている少女漫画以外の少女漫画というのを見たい人には最適の教科書みたいなものと思う。砂漠の幻影が◎。
表題作71年8月24頁,みつくにの娘71年11月16頁,精霊狩り71年5月31頁ドアの中のわたしの息子72年2月31頁みんなでお茶を74年2月31頁,千本めのピン73年1月7頁,プシキャット・プシキャット74年4月4頁,赤ッ毛のいとこ1976年8月~各4頁位,花と光の中1976年24頁,あそび玉のエピエード1頁(1985年「半神]収録),あそび玉1972年1月31頁,影のない森1977年2月24頁,十年目の毬絵1977年3月16頁,デックノボウ1983年16頁,砂漠の幻影1984年4頁,神殿の少女1984年4頁,月蝕1979年12月左開き12頁
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