恋はほろにがく
」のレビュー

恋はほろにがく

キャシー・ウィリアムズ/百瀬なつ

面白いストーリーの中に騙されきれない

2018年5月12日
痩せたから、ではなく、というのがとってもいいし、生まれ変わりたいと思ってダイエットに成功するヒロイン、ナタリーの実行力も素晴らしい。片想いの心情も言葉面ではとてもよく表されていた。「どうしてエリックじゃダメなの?」「どうしてケインじゃなきゃダメなの?」、恋の切なさ、片想いの辛さに私の胸も同調する。この苦しいところが、ヒロインの各シーンの動きに説得力を与えるので、最も作品を象徴する場面であって欲しい。勿論、エリックの感情の出ているシーンも印象的なので、それはよいのだけれど、この作品の主人公はナタリーだから。
アンナも、一種の片想いメンバーの1人。けれど悪役だから、彼女のやり方には悪い見本としての役目を負わされている。ここまでは役者皆がキッチリ。

しかし店とか室内とかそれをカバーするキチンとした背景絵はあるのだが、私は盛り上がれなかった。

私は二人の感情描写シーンの絵にどこか覚めていた。ケインの視線、ヒロインの心情説明はあったのに、いつまでも共に友達を手離せない印象を相手に与えて平然。
エリックが昔の恋人を今も忘れていない顔の絵はとても印象づけられたのに。彼こそ主役か?、というほどにエリックの表情の方が私の目には印象的だった。

あとは、エリックには含みを持たせた役回りとして動かしているのに、アンナの方はトリッキーに使っている、というのが少し気に障る。
だから、彼女の役回り転換は、作者の都合に見えてくる。アンナのドラマではないこのストーリーには、転換の事情が追いやられ後づけに説明され、読み手はいいように丸め込まれた感一杯なのだ。エリックの言動には小出しの伏線提示あるのに、アンナの言動は後半のひっくり返しのために引っ張ってむしろ読者を煙に巻く作り。後だしジャンケンのように展開を押し付けられると、もやっと来る。

それは物語テクニックと言えばそれまでだが、クライマックスの恥ずかしい「待った」と、それ迄のメイン二人の感情のあり方や時間の使い方、「友達」との関係とがバランス悪い。実は、と終盤でまとめて説明されても、だったらなぜ行動が中途半端?、というわだかまりも燻る。いいように敵役が利用されている。

最後に彼に言わせるヒロインに対する思いも、なんだそうだったの、なんて、気持ちよく裏切られないのだ。再就職先の雇用主のあれこれも都合良すぎて、良かったとなかなか素直になれない。
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