執事の分際
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執事の分際

よしながふみ

貴方が居ればそれでいい、という関係

2018年6月2日
映画化された先生の他作品は長編のためハードルが高い。よしなが先生初心者には一冊完結物からと思った。

BL以外の何物でもないのに、本作はその範疇に入れられてない。掲載誌を最後にチェックしてみても、BE_BOYと同人誌とあるから、詳しくない私にも判りやすい、ならではの出身であるにも拘わらず、だ(他のレビューアーさんも同様の指摘有)。


とにかく凄いの一言。余白や余韻の持たせ方上手いし、自分の世界をお持ちのような展開で、実力者ぶりをいかんなく発揮。恐いくらいにポルノ漫画な感じ、そんなところも中途半端で済ましてないのだ。といって、ストーリーは独特の時間進行であるにはある。時代背景を物語の作り込みに巧みに材料化し、貴族描写を肉付けしている。絵の力で既にまごう事なき貴族なのに。陰影とトーン捌きの職人芸のなせる技なのか? 出している雰囲気が、並ではない。
ただ、絵は私の好みでは全くない。絵やコマ割の上手さを、絵柄が好みでないからと過小評価しないので、Hが多すぎる作品に高評価を回避する傾向の私でも、これは別格の存在。

極めていやらしいシーンも何度も出くわして、情け容赦もなくBLで、しかも、二人の関係は主従の軛を超えて真剣な愛だ。このジャンルにありがちな、相互の愛情の確信までの回り道迷い道もあり、やっと二人は相手一人だけ、という状況を迎えるまでは仄暗い。
それに、前半は別カップルだ。

初BLレビュー。読んでいない訳ではなく。。今後もあまり積極的にはこの分野のレビューはしないだろうとは思うが、本作はレビューを入れておこうと思った。

このジャンルのレビューは難しいので敬遠していた。
竹宮先生が「風と木の詩」を連載されていた頃、弟の勧めで十何巻まで読み進めたが脱落、完読していない。単行本は未完だった当時買い進めたものの完結巻まで辿り着く直前に売り飛ばした。
以来、電子書籍でBLという一大ジャンルとして扱われる現実に接する迄は、ずっと遠ざかったままだった。かつて読めないと思っていた世界に、入ってみるとそこは専門用語の飛び交うレビューで高く支持され、やはり目眩がするのだが、かつては耽美一辺倒だった気がするこの世界、驚くほど広がっている。

レビューはBLについては門外漢過ぎて今後もやはり積極的にはしないつもり。
本作は、本作でかねて関心のあったよしなが先生作品に初めて触れて、つい書いておきたくなった。
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