氷の王子の眠り姫
」のレビュー

氷の王子の眠り姫

荷鴣/ウエハラ蜂

重いけど惹き込まれる

ネタバレ
2018年10月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 淡々とした始まりから段々と内容が重くなってきて、目が離せない展開に体が緊張しっぱなしでした。綺麗さっぱりハッピーエンドとは決して言えません。呪われていたヒロインはヒーローによって救われましたが、二人が背負ってきた過去は重くこれからも苦しめることになるだろうし、ここに至るまでに死んでしまった人が多すぎて辛すぎます。特にヒロインを守ろうとしてきた近しい人たちの死はこちらもきつかった。重いストーリーでも惹き込まれるように読めたのは、やはりヒロインとヒーローの魅力ゆえです。まず表紙からしてヒロインは弱々しい印象があったのですが、ヒロイン強いです。騎士になる為に鍛えていたし、何より精神的な面で強い。大切な人たちを守ろうと傷つけられても立ち上がる不屈の精神力がある。けれど憎しみに囚われて魔女に呪いをかけられてしまいます。このお話は、ヒロインが呪いをかけられてから二年後目を覚ましたところから始まります。ヒロインが記憶を取り戻したり、ヒーローが過去を回想しながら、現在に至るまでが解明されていきます。後半はその現在の状況からヒロインの呪いを解き、最悪の現状を産み出した元凶である魔女に復讐するまでが書かれています。子供の頃に出会い共に過ごしたヒーローが一途にヒロインを想い、ヒロインを救う為に戦う姿には胸が詰まる。ヒロイン以外は触れたくないほどの潔癖だし、目には目を歯には歯を、と汚ない手も使い冷酷ですが、それでもかっこいい。シビアなストーリーの中で二人の想い合う姿だけは純粋で綺麗で心が温かくなりました。とても重苦しい雰囲気のお話でしたが、読む価値あります。しばらく感想が出ないほど物語に入り込んでしまいました。作者様、もともと好きでしたが、やっぱりすごいです。
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