プライド(一条ゆかり)
」のレビュー

プライド(一条ゆかり)

一条ゆかり

軽く読んじゃダメ、気合い入れて読むべし。

ネタバレ
2018年10月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ お金、妬み、ひがみは人を変える。特にお金にすがったり揉める人は卑しくみえるもの。人の一番みたくないところ。それが根底にある故ドロドロはしてるけど、途中で読むのを放棄するほどではない。登場人物のつながりが見事。序盤はお嬢様育ちの史緒とお金がない萌の性格、歌い方の違いを描写。イタリア、ウィーン、ニューヨークにいってからはそれぞれの成長の仕方を対照的にすることで生まれ育った環境で培った品の良さ悪さから抜け出せない人間らしさを感じる。SRMのレコーディングをする度にそれぞれが成長していく様子は、憧れ、妬みも、互いにないものを補い合える関係になれることが伝わる。序盤は菜都子ママが名言の数々を、留学してからは史緒が成長する度に名言を言っている。
ラストはせつないハッピーエンド。
萌が妊娠したあたりから、まさか史緒と蘭丸のハッピーエンド?って期待させておいてからのどんでん返し。

一条さんはこのせつないハッピーエンド多いですね。デザイナーも砂の城もこういうどんでん返しせつないラストだったような気がします。
ただこの作品ではこのラストもありかもしれません。
史緒と蘭丸、萌と神野さんのハッピーエンドだと、萌が形式上略奪したことになります。神野の家族仲が悪いのは父の不倫だが史緒は神野を許すことで親を乗り越えたことにもなります。更にパトロンではなく、最後に蘭丸をとるとこれまで語った「お金は人を変える」の意味が…実際、史緒の生活を考えると神野さんでなければ彼女を輝かせられないのも確かで。史緒は努力もしたし、萌に出会って変わり成長した。蘭丸は史緒のおかげで世界に認められた。萌を思うとこのラストでしか萌は幸せになれない。このラストは恋愛面だけではなく登場人物全員がハッピーエンドというやはり一条さんならではの究極のラストなんだと思います。読めば読むほど深いですね。
それでも私は萌を妊娠させたという事実がある以上、マンガだからこそ史緒と蘭丸のハッピーエンドが見たかった…マンガだけでも夢を見たい気持ちと、上に書いた理由からこのラストでの納得とちょっと複雑(笑)

そして一条ゆかりさんデビュー50周年とは…少なくとも40年以上描き続けていらっしゃるんですね。ひとつのことをずっと続けることができる、それも才能なんだそうです。すごいですね。
いいねしたユーザ5人
レビューをシェアしよう!