愛人と逃避行(1)
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愛人と逃避行(1)

荻丸雅子/ルイーズ・アレン

守られたい願望を刺激する警護被警護関係

2018年11月3日
荻丸先生のヒストリカルは初めて読むが、荻丸先生の絵で緊迫シーン、意外だけれど追っ手から逃げる逃避行は、なかなかハラハラを煽っていて良い。
好みの分かれそうな絵柄の先生なのだけれど、ストーリーテリング抜群の先生と判っているから、私はそれほどそこは気にしないで物語世界に入れる。線がサラリとしてるのに、少しずつ意識し合う二人の心情が要所で見えるように配し、スリリングなシーンの中でも二人のキャラが効果的に映し出され、中身はちゃんと濃い。
危なっかしくも、人生で最も忘れられない決死の危機脱出途上に、育まれる愛情(友情と称し)と信頼。時折二人をおびやかす追っ手の存在が物語進行にピリッとした空気を通底させて、上手く気を持たせられて第2巻へ手が伸びる。
守り守られの関係性の中、ヒロインの意見に傾けるという彼の人柄を際立たせ、一方的に役割固定となるのを排している。同時に、女性の立場が弱い封建的な時代の中で、今の私たちが想像する当時の発言力のない女性に対して、相手を尊重する、という居心地の良さを醸し出す彼の魅力。これを押し出すことで現代に通じる理想的な男性像を築いている。
人物の絵がもう少し立っていたら、とは思うが作風ということも有り受け止められる。表紙が良い。荻丸先生の表紙は構図がとてもいいのに、生かされてないことがたまにある。しかしこれは色使いが構図の足を引っ張らなかった。

「何をうっとり見つめてるの!?/私ったら/この非常時に!!」、こういう場面が良い。
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