かなわぬ思い
」のレビュー

かなわぬ思い

キャロル・モーティマー/文月今日子

年齢差が、彼を辛抱強くさせたのか?

2018年11月20日
これはヒロインが若さゆえの暴走車のような思い込みを滾らせ、誤解で怒りの塊となって、一方的に忌み嫌っての、感じの悪い態度を取ったり、または彼に容赦なく幾度もぶつかったりと、取り付くシマを与えない話。彼の言葉にはハナから耳を貸さないし、読んでいて放り出そうかと思ったほど。頑ななヒロインの様子に可愛い気の欠片もない。HQは、この男女逆パターンが多いが。正直、そこまで疑惑の目を向けられてもまだ、好きでいる男性が、惚れた弱味?、そんな冷たくされても怯まないのが、急いで誤解を解こうと焦らないところが堂々として男らしいとも言えるが、もう引けばいいのにとも思えて、物語に心が入り込みにくい。

お祖父さんも諦めないねぇ、と、その、入れ込みようが不可解。

それでも、ヒロインから彼の許へ、受け入れてくれるか判らないのに鎧をかなぐり捨てて前へ進むところで、これまでの「傲慢な」ヒロイン返上の姿に話がたどり着いているのを見届け、やっと私も応援する気になった。「気の毒なジャイルズ・ソーバー」
って、やること違わない。
大スターなのに謙虚な彼という設定。寄ってくる女は皆自分のファン、みたいな不遜な態度を取らない出来た人物だから、余計に、ヒロインの面倒臭いまでのわざとらしく避けるやり方が、もう鼻について鼻について。そこまで思い込み激しくされたら言い訳などわざわざしたいと思わなくなる、わからないならそれで結構、と口をつぐむのも理解出来る。
普通に、人は、そういう華やかな世界で人気があれば、女性なんて掃いて捨てるほど居るだろうと考える方が無理が無いのに。
頑固な、大人げない、振舞いを延々見せつけられて、ストーリーに萌えが全然なかった。

1人で勝手に怒ってる人に、この話は彼が大人で忍耐力があったからいいが、普通はもういい加減にしろ、と、去ること一択だろうし、キライキライも好きのうち、なんだろうけれど、この話の中でヒロインが遠ざかり過ぎるので、彼の(実はヒロインは無意識に認めてる)魅力を、読み手の私が共感しづらい構造になってしまうのだ。
彼からのアプローチの回数の積み重ね分だけ、その積極性を通じて彼の魅力を滲ませようと構成されてるが、ヒロインの気持ちが強い口調で説明されているために、妙にヒロインの冷ややかな視点が入り込んで、彼の色気を見出だせないのだ。
30頁と89頁は全身像のブロボーションが受け入れがたい。
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