メイドを拾った億万長者
」のレビュー

メイドを拾った億万長者

キャロル・マリネッリ/狩野真央

堂々と美しく咲き誇っていなさい

2018年11月23日
二人の物語としても堪能したが、ベラの瞬間瞬間の、危機からの脱出劇の行動力に、私は今さらにして、何かを諭されたような気分だ。

姉妹作、双子のような作品「メイドが愛した億万長者」と、話がリンクしあっている。一冊ずつ独立してるし共に読めばより絡み合う人間の絆が楽しめる。ストーリーは、こちらの方が人生の起伏を感じ取らせる。どちらも、親や社会のしがらみが残酷なまでに、ヒロイン達を翻弄させるが、屈しないで、人のせいばかりにしないで、主体的に自分の人生を開こうとしている。そこが小気味良い。

初めから自由のある人も、無くてもそれを当たり前と思う人も、どちらも、自分の人生を自分が歩ける喜びがよく分からない。
けれども、彼女らのように、こんなの嫌だ、と飛び出すことによって掴む自分の人生は、代償も有ったが、シチリアの太陽に負けない光を放った。読んでいて、人生応援讃歌という側面が強いと感じた。
読者の身として、ベラのこれまでが余りにもキツくて大変で、強い陽光とは裏腹に強烈に暗闇の引っ張り込まされるような、黒社会の力が強くて、望んでそこに生まれたのでないのに、と思う。そして、それらは闇に留まらず表にも出て、大きな顔をしていた。その、恐ろしさ、悲惨さ、そこから逃れたいともがくヒロイン達。生まれた家がそこにあって、生まれた土地にはそういう血と暴力のがんじがらめ、しばりがある。
亡命に近いのではないのかと想像したし、そんな感覚でベラの成功を祈って読んだ。彼女の境遇には涙が出る。が、同時に強い心で、行動する姿に勇気づけられた。本当に素敵な女性なのだと思う。

堂々としていなさい。誰に何を言われても。
ベラの母親は身を落とすことを強要されたが、娘には気高く生きろと諭した。
この母親の人生を思うとき、娘のベラを幸せにしてやることが出来て、天国でもの凄く喜んでるだろうと思う。女性が稼ぐことが大変だった時代。
その島で暴力によって支配する組織から、不幸な人生を余儀なくされた島民達が、ドン亡き後自由を噛みしめてる光景と対照的。
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