色にも出せず
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色にも出せず

恋緒ジノ

純朴な染物職人×遊郭の二階廻し

ネタバレ
2019年1月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 明治初頭の吉原を舞台に、色恋より着物に興味を持つ染物職人・藤二郎×遊郭で生まれ育った二階廻し・一之介。一見ドライで非情なようで、心の内では遊女の行く末を憂えて自身のことも嫌悪している一之介が、藤二郎との出会いで優しく本心を暴かれていく。詳しくないので実際どうかは分かりませんが、この時代のことをよく調べられている印象。捻くれているけど本当は優しい一之介が、一生懸命自分を悪者にしようとするのが見ていて切ない。なにを言われてもまっすぐ一之介を見てくれる藤二郎がいてよかったなあ。ラストは少し都合がいいくらいの終わり方ですが、読後感がよくて私は好きでした。遊郭の中は基本的に明るく活気のある描写が多くて読みやすかったです。ただ恋愛部分は焦れったいくらいゆっくり進むのがよかった分、いきなり出来上がってしまったのが残念。そこはもう少しじっくり読みたかったな。
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