愛はうつろいやすく
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愛はうつろいやすく

大橋卓/エマ・ダーシー

一夜の嵐の果てに見つけたもの

ネタバレ
2019年3月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 忘れられない「恋」いつまでもいつまでも自分の中でそれは醜かったり、美しかったり、大抵の場合そうして昇華されていくものだと思う。そこには一つの約束事があって、その相手とは距離という隔てがあることだと考えます。けれど、マックスとマデリンの距離は遠くなるどころかとても親密。作中に表現されているが、二人はお互いに持ちつ持たれつという関係だと、これではまるで長く寄り添った夫婦のようだ。しかし現実は恋人でも夫婦でもなく、辛辣な言葉で相手に自分を印象付けることに終始した悲しい関係。マデリンは、年月が過ぎればすぎるほど年老いていく自分をマックスのそばにいる若くて美しい女性と比較しては悩み、彼に毒を吐きそして反省するという日々を繰り返してきたのなら、消えて無くなりたいと思う気持ちには同じ女性として同情もします。しかし、「命」を駆け引きに使うのはいただけません。マデリンは卑怯な手を使いました。それは酔った勢いで本意ではなかったとしても許せないことです。彼らの真実を目の当たりにしたジョーとヘレンは、自分たちの「愛」がまだお互いにあることに気づいて結ばれます。ただ、物語としてはマックスとマデリンの大人の情熱に比べ、ジョーとヘレンの幼い情熱が霞み、主役が入れ替わっているように感じます。それは、マデリンの話にページを割きすぎな事と、ヘレンのマックスへの気持ちには「愛」ではないことが最初から書かれている事で読み手にヒーローとなるジョーがいつ登場するか期待させておいて、マデリンに当て馬として使われている事、彼女の苦しんだ過去(ミスコン優勝後)の事象が何も書かれていないことにあると考えます。ヘレンの苦悩が薄いのです。見た目だけで判断されることの苦しみを読み手に伝えていないことで、どんな結果からマックスと愛のない結婚を決断したのか、ジョーという男性をどれだけ特別に思い、どれほどの希望だったかを表すことに失敗しているのです。残念。
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