昭和ファンファーレ
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昭和ファンファーレ

リカチ

昭和初期、七難八苦に負けず駆け抜ける少女

2019年4月22日
夢中になって読んでしまいました。完結したらまた、1から読み返したいと思える作品です。
昭和初期の時代に生まれ、夢と希望を追いかけて、時には挫折を知りながらも挫けずに、前を向いて進み続けた1人の少女の人生の物語です。

最初は、銀幕スタァを目指す夢の詰まったキラキラした物語だと思っていました。
でも中盤から、この時代の背景が痛いほどリアルな描写になっていき、戦争のせいで大切な人、大切な映画も、何もかも奪われてゆくんだということが痛いほど伝わってきました。

だからといって、決して悲恋だとか、悲しい物語ではありません。
この物語の中のセリフで例えるならば、「七難八苦」でしょうか。
主人公の人生にはつらいこと、苦しいことが沢山待っていますが、そんな中でもいつだって前を向いて精一杯生きてきました。
そんな彼女の姿を見て、苦しいことがあっても前を向いて進んでいくしかないのだと、読者の背中を押してくれるような素晴らしい作品だと思いました。

正直、戦争のお話はつらいのでやめてほしかったです。でも、この時代を書く上ではそれこそが現実なので、平和な嘘の世界なんて書けるわけがなかったんですよね。
戦争の悲痛さ、無情さを痛感する描写を見て改めて、平和の中で生きていられるだけで今の時代の人々はどれほど幸せなのかも実感させてくれる作品でした。

序盤では生きているのが当然だと思って物語の先々を妄想していた私ですが、この時代ではいつ死んでも何も不思議はない中でみんながそれを受け入れて、必死に生きているのだと胸が苦しくなりました。

時代背景にばかり目がいってしまいましたが、この作品の何よりも良い所はそれぞれのキャラクターが魅力的な所だと思います。
月子ちゃん登場時、母親とのエピソードを見せられていたせいで、お人形のような彼女の幸せも願わずにはいられませんでした。
そして、浅海と天良という正反対のヒーローがそれぞれ別の形で小夜子を支えてくれるので、どちらも無くてはならない存在です。

全ては戦争のせいで、せっかくスタァとなっても映画は撮れないし、恋をしても離れ離れになってしまう、そんな世界観なのですが、だからこそ必死で会いに行き、今自分に出来ることを頑張る小夜子の姿を心から応援したくなる作品です。

もっと巻数長くなると思いきや、近々クライマックスの様です。小夜子の激動の人生を見届けたいです。
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