囚われの宝石
」のレビュー

囚われの宝石

キャロル・モーティマー/桐坂真生

霞んでしまうニーナとレイフの物語

2019年6月28日
ディミトリー・パトリフという男。隠遁しても尚富と権力を持つ男、そして何よりも妻を愛し、唯一の娘を愛し護る素晴らしい男。数々のHQを読んできたけれど、こんなにも富豪でありながら素晴らしく愛情を持った男が描かれた作品は稀有だ。トラウマからの脱出、富や権力ゆえの傲慢さからの偏愛を読んではきたが、これは醜態のない物語だ。まさしく「愛」故にある行動。ニーナとレイフの物語はありきたりのHQ物語ではあるが、その裏にあるニーナを取り巻く環境の酷さと素晴らしさのコントラストは涙なしではいられない。娘可愛さから悪意からはガードをつけるという窮屈さを強いても、閉じ込めるわけではなく彼女自身の気持ちを優先させて行動させて経験させる。黙って見守ることの辛さそして強さを感じました。そしてニーナも頭をよぎる父親の裏の顔に恐怖はあるものの父の愛情を信じ愛す優しく強い女性。ありきたり、と書いたけれど、それでもニーナとディミトリーの親子にある色々を自分に置き換えて感じ考えるレイフももちろん素晴らしい男でした。それでもやはり若い二人の事は霞む・・・。
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