捜査官は愛を知る
」のレビュー

捜査官は愛を知る

鳥谷しず/小山田あみ

愛していると言わせるというのはちょっと

ネタバレ
2019年7月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ またもや読むのを中断。後編もすんなりと受け止められない感じがあって、まずそこをひとこと書いておきたくなった。相手の百合永が、主人公篠森に愛していると言わせようとする趣向が、どうしても性的関係における快楽との錯綜を感じずにはいられない。
読了後にレビューを書き足すつもりだが、今は兎に角、本を閉じた。主人公の相手の男(BLだから)百合永に私はどうしても不気味さ、不可解さ、ちぐはぐさを感じて、好ましく思い辛い、ということを記しておく。
彼の押し付けがましさ、図々しさ、これが、百合永に対する篠森の「変態ストーカー」観として、文中何度も使われる言葉と妙に歩調が合って、私の気持ち悪さを増幅させる。

主人公は、体からねじ伏せられて、愛情を芽生えさせられた様子だが、読んでるこちらが受け入れがたい。
自分が可愛がっている小動物がなついていないのも、どうも気持ちの熟しが、読み手の私には、時期尚早感一杯と同期。その疑問符付けたままずるずる泥沼。Hだけだった昔の昼ドラ的に思えて、絡むシーンに無理矢理な空気がつきまとってしまう。篠森が期待していたとの設定にも拘らず。

いくら使用人的立場としても、頻繁にあちこちで顔つき合わせる偶然がついてけない。口のききかたなど言葉のチョイスも含めて、生理的にダメかもしれない。

でも、ストーリーの横軸的な、事件のモヤモヤがうまく興味を持たせて、展開に期待が持てるため、暫く気分転換して、また、続きを読み始めようと思う。残りの8割を。

読了し追記。愛という言葉を随分彼が用いている割に、そこに彼の心的描写の裏付けは物足りない。本書中の、性行為の激しさ描写が必ずしも愛情と強い相関関係はないが、同義に読める。主人公の方がまだ余程情を行間に感じる。

思うに、鳥谷先生は状況説明力にすぐれた文章でとても読ませるのだけれども、心理描写は状況説明化していて、当方の胸が痛くならない。
腹黒百合永さんが大所高所から主人公篠森さんにあれこれ偉そうなことを言っても、上滑りのよう、笑えない。
寧ろ終始強がる主人公が哀れに感じてしまう。今後二人が薔薇色の日々であろうとも、無邪気なハッピーは信じきれない。そこまで誠実さを感じ取れないこと、まだ裏の顔の比重の含みを持たせていること。
60%以降は面白かったが、それは二人のシーン以外。

「愛の辿り着く先」のイラスト、挿し込み場所が良くない。
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