物語全体を静かな雨音が包んでいる





2019年7月8日
日本でいうところの、毎時20ミリ位の雨がずっと降り続いているような錯覚をさせるような物語だ。もちろん実際に降っているわけでなく、マロンの心の中に降り続いている。マロンの身に起きた事も雨音に閉ざされて外界からは遮断された状態で叫び声は雨音に消されているかのように外へ出せない。ずっとずっと降り続いている。こういう類の精神的圧力はなかなか解消されない。10年経ってもそれは普通でいう1日と何ら変わらないほどに厄介なもの。何かの拍子にフッと顔を出し追い詰められるのだ。何かで聞いたことがあるが、こういう精神的な障りから逃れるために「恋」をすることで解放されるという精神科の治療方法があるらしい。それを鑑みるにこの物語は、マロンにはハリスという絶好の相手と巡り会えたという奇跡にも近い幸せなロマンスを書いてあると言える。窓の外は晴れていても心の中はいつも雨。雨天に出会いがあり、その後にも雨天の日にはハリスを想って途方に暮れるマロンの回復と恋慕がとてつもなく哀愁をそそるのだ。

いいねしたユーザ4人
-
yowakage さん
(女性/50代) 総レビュー数:0件
-
ありす3 さん
(女性/-) 総レビュー数:1203件
-
nyanya6 さん
(女性/50代) 総レビュー数:939件
-
りのりん さん
(女性/30代) 総レビュー数:5件