けだものたちの時間~狂依存症候群~(分冊版)
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けだものたちの時間~狂依存症候群~(分冊版)

big brother

「共依存」、なるほど…

ネタバレ
2019年7月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 怯えている方も多くいるため、レディースコミックに分類できるのかどうかはちょっとよく分からない、というのは率直な意見です。甘々な展開を期待している方(最初は私もちょっとそう思いました)には受け付け難いかもしれません。

ですが、ここから先は私の感想です。
今まで換金(不適切なものとして処理されたのですみません)ものは読んだことがありましたが、ここまで「共依存」に徹底した作品は出会ったことがなかった。物凄くよかったです。
タグに「社会問題」と付いていたので「なんだろうな」と思っていたのですが、読んでいて納得。最初、誘拐犯の今井はただのサイコパスかなと思いきや、その狂気の裏には、劣悪な家庭環境、そして母親からの性的ぎゃくたいと、確かに現代で指摘されているような社会的な問題がくっついています。加えて被害者である愛理も過去に性的な暴行を実の父親から受けており、本来なら「分かち合えるかもしれなかった友」として出会えたらよかったであろう二人は、皮肉にも誘拐犯と被害者として出会ってしまいます。
読み始めた当初こそ、負の連鎖ゆえの狂気か…?と思いましたが、お風呂のシーンで今井くんの表情を見た時少しだけ泣きそうになりました。一読者として、愛理を誘拐した挙句酷いことをしまくる彼のことを許すことはできなくても、「幼少期にあんなことがなければ…」「歪みは自然に生まれたものではなく、理解してくれる人さえいれば、ひょっとしたらこんなことには…」と思ってしまい、そういう意味では彼の過去に同情してしまいました。
読後「依存しているのはどちらなのだろう」、と浸れるのもこの作品の良いところだと個人的に思います。
久しぶりに超良作に出会えたことに感謝しています。絵も綺麗だし個人的には大好きな絵柄ですし、ストーリーも良い。
これからも買います。
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