彼と彼の後遺症
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彼と彼の後遺症

ZACK

惜しい!!

ネタバレ
2019年7月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 哲学的でスタイリッシュで空気を味わうような作品。でも、前半15話前後までが、「読み進める必要性」が乏しいと感じました。登場人物が小難しい理屈をこねつつも、さほど困った状態でもないし誰かを渇望している風でもない。「これが俺さ」と割り切っているように見える。感情の起伏が乏しい。読み手である私に「これを読み続ける理由」がないんですよね。誰かの恋模様が気になるわけじゃないし、犯人が誰か気になるような謎があるわけでもない。だから、勿体ない。後半まで読めば、それぞれが答えを見つけていく様子や、コミカルに感情的な言動をするようになるシーンに出会えるのですが、そこまでが長い。ページをめくりながら、「これは続きを読む必要があるんだろうか?そもそも、目的地が良く分からないんだけど」と疑問が湧きました。絵はウマいし、物語も作者の美学にのっとってしっかり作り上げられているのだろうと感じるけれど、娯楽性が乏しくて、いつ本を閉じても続きが気にならない気がする……と思いました。そう言いつつ読んだのは、この淡々とした調子で35話も続いて、どのようなラストになるんだろう?と疑問を感じたから。物語への興味と言うよりは構成に関する興味でした。ストーリーに引き込まれたとは言えない状態の15話前後でした。あれだけの人数を入り組ませるのではなくて、それぞれのエピソードを数話で完結しながら順繰りに複数カップルを描くのでも良かったのかなと……。勿論、それが分からない程度の作者ではないだろうなと感じるので、敢えて描きたいように描いたのかなとも思います。こだわりがあっての事なのでしょう。でもそうなると、商業的ではないのでは?と思います。アート的に自分の世界観を描き切ったのであれば、それはそれで素晴らしいと思います。作品の中に含まれる要素も興味深い。ただ、読み手を選ぶ作品にはなってしまいうのかな。正直、読み放題だから最後まで読みましたが、前半部分の「誰がどこへ向かおうとしているのか分からないけれど、さほど当人たちが困っているように見えない」状態で、お金を払って読み続けるのは厳しかったと思います。
作品としては☆4前後。販売物としては☆2かな。でも、作者の才能とセンスは☆5だと思うので、また色んな作品を生み出して欲しいと思います。
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