このレビューはネタバレを含みます▼
農作物がどうしたら良く育つのかを考え、土に触れ、実際に育てることに人生を費やしてきた伯爵令嬢のクリスタは、22歳になり、とうとう父から結婚相手を探すよう命じられます。今回は今までと違い、外堀を埋められ逃げ場がないことを悟ったクリスタは秘策を考え、実行に移します。その秘策とは、非常識で我儘な令嬢を装い、相手に振られ、親が結婚を断念するように仕向けること。その相手としてクリスタにロックオンされ巻き込まれたのは、国王付きの護衛騎士であるゲープハルト。お堅い雰囲気を纏っているものの、実力だけでなく、美しい見た目も持ち合わせていたゲープハルトは貴族やその令嬢からも人気が高い人でした。そんな人に一方的で非常識な振る舞いを行い、振られるために自ら近付くクリスタ。こんな素敵な人にわざと嫌われるのは嫌だと一瞬思うものの、目的のために派手に実行します。ところが目を覆いたくなるほどの恥をさらすも、ゲープハルト本人は嫌がっているのに結婚話は進み、二人は結婚することになります。所々思わず笑ってしまう中にも、それぞれの複雑に揺れる気持ちが見え隠れし、この種明かしはいつどのようにされ、その後どうなるのか、目が離せませんでした。それどころか、種明かしなどなくても嫌っていたはずのクリスタにどんどん溺れていくゲープハルトにニヤニヤでした。お互いにすれ違いながらも惹かれ合っていく二人の気持ちが丁寧に描かれていて良かったです。短めのページ数でしたがそれを感じさせないくらい充実していて面白かったです。