このレビューはネタバレを含みます▼
これは予想外でした。
オメガバース作品で、Ωとαの双子となると、どちらかというと過激なシーンばかりの陰鬱な作品をイメージしてしまったのですが、違いました。
表紙と説明文だけで敬遠した自分を反省。
読み放題で読みましたが、じっくりと読み返したいと思い、値下げ期間中に購入しました。
双子だけれど、αとΩに生まれた兄弟が、アクシデントで番になってしまい、歪んでいく。引き離そうとする大人たちに反抗して、二人で生きることを選び、自分たちは全部同じなのだ……と、現実逃避のように、首筋の歯形も、服装も同じにして生きる。
そこへ、借金問題から二人に飼われることになった主人公のΩが一緒に暮らすこととなり、バランスが崩れ、双子だけだった世界から、自分たちを理解しようと歩み寄ってくれる「他者」を得て、変化が生じる……という物語。
双子の兄弟としての葛藤。本来兄弟に対してそんな感情を抱くはずないのに、ヒートという本能を刺激する現象の所為で一線を越えてしまった苦悩。そして、「同じ」にしているけれど、個人を認識してもらえることの喜びと戸惑い。そういうものが上手に描かれていたと思います。
ラスト、双子が、ただの兄弟として、主人公をとりあうのが本当に可愛い。もう少しこの三人のこの先を見たい気もするけれど、どちらとくっつくかがはっきりしないまま終わる方が幸せなのかなぁ~とも思ってしまいます。
そして、この三人なら、ずっと一緒に暮らしていけるようにも思えて、応援したくなるラストでした。