花と奥たん
」のレビュー

花と奥たん

高橋しん

可愛くて美味しくて、かなしい

ネタバレ
2019年10月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 新婚とはいえ、帰るあてのない夫にあんな手間ひまかけて何品も何品も、毎日毎日…結婚当初から一汁一菜がいいとこの私にはゾッとする程の凝りよう。
何があっても夫を待ち続ける、という奥たんの強い決意と、痩せ我慢と悲しみと運命への怒りのようなものも入った執念の表明なんだろう。
男って彩り綺麗な野菜たっぷり味つけ凝った料理には反応薄く、とにかく米、米、米と味の濃いおかず出しときゃいいとか、既婚者にはクスッと笑ってうなずける内容もあって可愛らしい。
この作者さん得意の終末モノまんがだけど、よくよく考えてみたらこれってつい最近日本であった事そのものなんだよね。
災害、停電、汚染された食物へのパニック、立ち入れないホットスポット、大事な人が帰ってこない事、それでも人は食べて自分の足で立って否応なく前へ歩かなきゃいけない事…
最終兵器彼女ほど荒唐無稽じゃなく、身近な小さな幸福と織り混ぜて描かれる悲しみ。いい意味でこの人の作品は内容が深く厚くなったなぁと思う
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