最初の警戒心以外は真っ当な男ローマン





2019年11月9日
なかなか良い展開で進んでいくのだけれど最大の欠陥が、ローマンの背景の欠落。彼がどういう人物なのかが分からないまま進んでいくので、クライマックスシーンである父親とのやり取りに説得力がない。「父さんが僕の事を我儘で嫌な奴と思われていてもしかたない」というセリフに、読み手は あら、そうなの?!と困惑してしまう。そこまで進む間に、親子の確執も、世間の評判もポツポツとした布石は見受けられるが線となっていない為、悪手となって終わってしまっている。ロマンチックにと意識して書きすぎているからか、スカーレットとローマンの関係性は必要以上に書かれていてそれでも突飛な印象が否めない。スカーレットの姉の所業に驚くしそのストーリー性は上々と思えるし、描き方にもセンスを感じるのにとても残念だ。ローマンそっくりな息子の存在に右往左往される彼の困惑に共感もするし、真実に苦しむスカーレットに同情もするが、あと一歩のところで躱されて歯がゆさが残る印象だ。

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ちょびヒゲ さん
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