七年目の誘惑
」のレビュー

七年目の誘惑

チェリー・アデア/小長光弘美

これまでどうやって生きてこられたのか

2019年11月9日
「女であることを楽しんでいる」。彼がヒロインに言う言葉がまさにあてはまるストーリーだが、かつて読んだコミック(高城可奈)はそんなストーリーではなかったな、と、こちらを読後、態々漫画版を再読に行った。
相違点を挙げ連ねてどう、ということで改作云々する気は全くないが、脇の面々の立回り方がかなり異なっており、小説は男女の関係に比重がありすぎて、私が漫画派の理由はこれだわ、というところ。
性的描写が全体の7割には達するイメージなのに、読んでるこっちは只の傍観者となってしまい、自分自身の感覚に訴えることがなく、私こそ氷の女になってしまったのか、不安になった。

場所、シチュエーション、道具など、どれ程手を替え品を替えて著されても、私はドキドキ出来なかった。だが、そそられないそのシーンが延々と。

また、516~536頁の明から暗への急転の仕方に於いて、11ヵ月の時間感覚と関係進化とが、私の中ではバランスしなかった。

「君が僕にしてくれたのは、君自身がずっと望んできたことなんだ」の所で、小説の二人の関係の相互的な与えあいと与えられあいとを感じた。二人は幸せな子供時代を過ごしていない。コミックでは、ヒロインによる「相手のため」要素が少し日本的で、互いがどちらも関係をたのしんだ感覚が弱い。だから、彼の幼少期の話を、コミックはサイモンに語らせて、話の広がりや側面展開を、小説は当人に語らせて、彼の素顔に触れさせる機会を、別趣旨に使用した。

ハーレクインの精管切除というのもまたこれ?、という気持ち。ただ、だからこそ、これだけの回数と情熱で結果がもたらされた、ということなのだろうけれど。下世話な話、間が空く方が受胎の効果あるとの説もあるが。。
ヒロインは知らなかったとはいえ、お酒やストレス、深夜の日々の移動なども、最も大事なデリケートな時期になんだかなぁ、という気持ち。
「疎遠の妻、もしくは秘密の愛人」(クリスティン・メリル作)の、同一人物ながら妻と愛人の二役を果たした(夫に知られずに)設定を連想した。あちらは、コミック(さちみりほ)は読み通したが、小説版の方は本屋でざっと読み後日買おうとしたら売れていた、という経験があるが。

飾り立ての少ない表現が、進行に前進感があるのに、二人がずっとセッ××ばかりしているために、読み終わったとき、600頁超の長さにただ付き合わされただけ、という感覚になってしまう。
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