このレビューはネタバレを含みます▼
2巻の末尾に萩尾望都さんのエールが掲載されている。彼女はこの作品を女性の不平等、生きにくさを描いたものとして読んでいるようだ。
無論、そのようにも読めるけれど、新妻くんの存在が小さくないことを考えると、ひどい心の傷をおった人がそれを克服して立ち直る有様を描いた漫画のように私には読めた。それは性別とは本質的に関係のない話で、そうであるから一層共感出来たような気がする。
うまいなと思ったのは、美鈴の住んでいる古い一軒家と庭木の設定。棕櫚とか、ソテツとか。庭木の手入れをする新妻くんとおじいさんの挿話が描かれる。そのようななにげないことの積み重ねで新妻くんと美鈴が心の絆が深まり、美鈴はそうしたものをたよりにトラウマに対峙することができたように思えた。ラストシーンも庭仕事だし。一見ありきたりで何気ないが効果的な設定で、こういうディテールにも筆者の非凡さを感じた。